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羊と鋼の森

2016年本屋大賞作品です。2018年には映画が公開されるそうです。
作品の内容はというと、主人公が高校生のとき、とある出逢いから調律師を目指し、駆け出しの調律師として成長していく仕事小説です。タイトルは謎解きのようにみえますが、主人公が調律師とわかればピアノのことを指していることがわかります。
この本は先の上流階級と同じくお仕事小説でもあるのですが、静かに雪解け水が流れていくようにサラサラと時間が運んでいきます。突出した才能を持つわけでもなく、かといって音楽の英才教育を受けたわけでもない、どこにでもいる平凡な主人公が個性もあり才能もある先輩やクライアントに囲まれつつ、コンプレックスに悩まされ、それでも進むしかない現実世界はたいていの人が経験していることでしょう。
スペシャルでない主人公、大げさでもなく自然な形で流れていく空気感の描かれ方が、私のありきたりな日常感と近く重なり、それはドラマでもなく普段生活のポートレートのような作品でした。すごく面白いか?というかというとそうでもない。だからといってつまらない作品でもない中間的?です。
「才能があるから生きていくんじゃない。そんなもの、あったって、なくたって生きていくんだ。あるのかないのかわからない、そんなものにふりまわされるのはごめんだ。もっと確かなものを、この手で探り当てていくしかない。」 の外村のくだりは、多くの人が感ずることでしょう。才能なんてないけど、だからといって今の仕事から降りるわけにはいかない・・たいていの人か感じている感覚をさらさらとした文体で表現してくれています。

 

 

 

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羊と鋼の森 [ 宮下奈都 ]
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