日本のジェンダ・ギャップ死すは過去最低の121位、G7では最低。
今でこそ男性の育児参加を推進する風であるが、男女の収入格差、管理職ポジション、技術職、専門職の男女差はいずれも100位よりも下である。
さてお隣の国の韓国も男女格差の激しい国の1つである。本書は韓国で発売されると女性から多くの共感を得て社会現象にもなった本である。日本だけでなくイギリスやフランスなど16カ国の翻訳される予定であるそうだ
主人公のキム・ジヨンは一児の母。IT企業につとめる夫をもち、ソウル郊外のマンションで暮らす平凡な家庭である。ある日キム・ジヨンは彼女の知る女性(母、友人など)がまるで憑依したかのようにふるまい、突然複数の人格が表れるという精神病となった。
物語はキム・ジヨンを診察する精神科カルテの内容として、キム・ジヨンの過去をたどる体裁をとっている。
キム・ジヨンの生まれた80年代においても、女性は家庭内、学校内でも男女差別を受け続けてきた。
たとえばこんな感じだ
男の子を出産して、はじめて「嫁」の役割を果たしたことになる
予備校生にストーカーをされても、男性を誘惑するような短いスカートをはく女性が悪い
就職活動も男子生徒優先
勤務先でも、女性は結婚出産で仕事に穴をあけるから、大きな仕事を任せられない
出産を契機に、軌道にのった仕事を辞めざるを得ない
義両親の家に行けば、夫は何もせずゴロゴロしているだけなのに、嫁の立場となる女性は義母に気遣いながら台所に立つ。行きたくないといえば、我儘な嫁と言われる
などなど・・韓国の出来事なのに、日本とほぼ同じ構図で、思い当たる方も多いのではないだろうか?
女性にとって理不尽のオンパレードだ。
本書ではキム・ジヨンが精神病が回復したとか、その後については語られていない。随所に韓国社会での調査内容が具体的数字が盛り込まれており、淡々と物語が進む。
そのことが登場人物の誰かに対し、極端に感情移入させることなく、韓国社会の男女差別が(日本もだけど・・)当たり前に起きていることを伝えるレポートのような作品になっている。
多くの女性は、おおいに納得、共感する部分も多い、男性は正直読みたくない本だろうが、目を背けず女性の苦悩を知ってほしいと思った。
長い慣習は簡単に覆すことはできない。しかし長年女性が感じてきた理不尽さを「声」として発信した本書の存在は大きいと思う。女性問題について関心がある方は興味をもって読んでいただけると思う。また韓国の話ですが、内容も日本女性に共感できる面も多く、中高生の夏休みの課題図書としても良いのではないか?これからを担う学生にもおすすめしたい一冊。
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