この本は2016年直木賞候補となったピカソのゲルニカをテーマにした作品です。
ピカソの反戦を世界に訴えた作品「ゲルニカ」をテーマにしたアートミステリー。ゲルニカはスペインの地方都市の名前です。ピカソのゲルニカのタイトルでピンとこなくとも、教科書に掲載されていることも多く作品を目にすれば、ピンとくると思います。
本作品はゲルニカをめぐる第二次世界大戦頃、ピカソとその恋人ドラが生きた時代と、2001年NY同時多発テロの現代の時代を交互に入れ替えながら、ゲルニカが世界に訴えようとするもの、そしてゲルニカは誰のものなのか?を問いかけていきます。
ノンフィクションとフィクション部分の緻密な運びで違和感なく溶け込み、新しいゲルニカのストーリー小説の誕生と思う。
全般に著者のピカソに対する想い入れの強さを文章のなかから伝わってきます。しかしゲルニカへの想い入れの強さからか、繰り返されるゲルニカは誰のものかへの問いかけ等は、似たような記述がリピートされ、しつこさを感じる面もありました。
そのせいか?本全体として、つまらないということはない。それなのに作品2/3までは、面白さよりくどさが目立つと感じた。しかし残る1/3からは予想を超えた展開となり、ラストの読書スピードが上がりました。
この本のエッセンスとは、現実と仮想の世界が巧みな筆力により、見事にまとまった作品であると思う(しみじみ)・・
また私は美術に明るくないので、1つの作品がこれほどまでに政治的意味を含んでいたことを知りませんでした。この作品を通して、絵そのもののデッサンや色使いといった儀本だけでなく、背景を知る楽しみ方を知りました。休日の美術館のめぐりもこの作品を知る前と後では全く違うものになるでしょう。
本作品のテーマに取り上げられているのが、現代アートの巨匠といわれるピカソ。恋多き人であり、ピカソの傍らにいる女性はそのまま作品へと投影されることが多いです。
せっかくなのでピカソのホロスコープはのちほどアップすることにしますね。
暗幕のゲルニカ (新潮文庫) [ 原田 マハ ]
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