かつて映画化されたこともあり、タイトルはご存知の方も多いことでしょう。今頃ですが、今頃~と言われてしまうことの多い(汗)私の読書棚です~
まずは、あらすじ
中学に進み女の子特有のグループになじむことを拒んだ「まい」は次第にクラスから浮いた存在になりイジメを受けるようになった。登校拒否をした「まい」を両親は西の魔女と呼ぶ、田舎の祖母のもとへ預けることにした。
祖母と暮らしはじめ魔女修行をはじめた「まい」は次第に都会でささくれだった心を癒され自立心が芽生えはじめ、一方で死について考えていくこともあった。そんな心地よい生活をある出来事が襲った。それは祖母の飼っている鶏が何者かに襲われた。その事件が発端で祖母と「まい」の間がぎくしゃくする。「まい」は転校することになり祖母との間がぎくしゃくしたまま祖母の元を離れた。そして2年が経過し祖母の死を知らされた。ぎくしゃくしたままの「まい」と祖母だったが、祖母は「まい」にしか理解しえない方法で、あることを伝えていた。
タイトルからは、さも魔女系ファンタジーを想像されるかもしれませんが実態は異なり少女の心の成長を描いた作品です。
不安げで自信のない「まい」にいつも自信に満ちた祖母の言葉の数々は◎◎歳の自分にとっても、すっと心に落としこむ。いい歳をしているのに、祖母の声を受け入れられるのは「まい」のように確信めいた軸が感じられないからかもしれません。本作品は魔法の言葉の数々が登場しますが、自然で風が空間を流れるようにこぼれていきます。
その内容は
「自分で決める」
「決めたことをやり遂げること」
です。
暮らし始めた頃の「まい」は、イジメで傷ついていたこともあり、問題から逃げてしまうか弱い少女でした。それは自分にとってありがたくない状況も逃げることでしか自分を守ることを知らなかったかもしれませんし、またイジメから逃げることも大事な防御の1つであり、必ずしも悪いことではありません。
一方で祖母と暮らし魔女修行をした後の「まい」は、逃げるだけでなく自分で決めて行動できる意思を持った女性へと成長していた。そんな成長の1つにサンドウィッチを食べるシーンがあります。当初サンドイッチに入っていたキンレンカの葉をよけてました。「まい」は嫌いなキンレンカから逃げる行動をしていたのです。ところが最後の方のシーンではキンレンカの葉を事も無げに食べていますが、このことから「まい」は長い魔女修行でもあり人生の1ステージを、転校するという決断を自分で決めて祖母との魔女修行を終えたのでした。
本作以外に、まいのその後を描く短編作品「渡りの一日」が入っています。
高校生になっても「まい」は祖母との魔女修行で覚えたことを守り、自分で決めて、やりとげることを実践しています。「まい」は自分が正しい信念を突き通す女性へと成長していますが、それを出来ないいい加減さが残るショウコに対する上から目線が気になりました。この作中では「まい」よりも、自分のやりたいこと、好きなことを仕事にし、1つ1つの問題を乗り越えることに爽快感を持つ「あや」の人物に心の大きさと好感が持てました。
小学校高学年、中学生向けの作品であることから文体は平易ですし短かいため、ランチの時間に楽しめる一冊です。